GRAFFITI CONTENTS
カメラが捉えた事実の断片、監督の問題意識、被写体への想い。さまざまな複雑 性を帯び一つの作品となった映像作品の数々。そんな魅力あふれるドキュメンタリー をジャンルごとに総計100本紹介します。もしかしたら、この中からあなたの人生を 変える、かけがえのない作品を見つけることができるかも。
曽我部恵一が選ぶドキュメンタリー作品「音楽」

曽我部恵一(52)ミュージシャン
サニーデイ・サービスのボーカル、ギター。「ROSERECORDS」の主宰や、「カレーの店・八月」のオーナーなど、活動の幅は多岐にわたる。
サニーデイ・サービスのボーカル、ギター。「ROSERECORDS」の主宰や、「カレーの店・八月」のオーナーなど、活動の幅は多岐にわたる。
成功の裏にある苦悶
生々しい姿がここに
生々しい姿がここに

-STORY-
伝説のヘヴィメタルバンド・メタリカに密着した作品。音楽シーンの最前線を走り続ける彼らの、苦悩や葛藤を映し出す。
メタリカというバンドに密着した作品で、レコーディングの様子や制作の裏側がよく描かれています。当時のメタリカは、とにかく仲が悪いんですよね。笑っちゃうくらいにケンカをしていて。特に印象的だったのは、ミーティング中にドラムのラーズが、ボーカルのジェイムズに「ファーーック」と、顔を近づけて怒鳴るシーン。本当にこんなことしてるのって、疑っちゃうくらいわざとらしいんですけど、あれは最高でしたね。僕は自分の意見のある人と仕事がしたいと思っていて。自分が100%いいと思ったものに対して、いやこれもいいんじゃない?って意見があったら、もっと良くなるじゃないですか。だからメタリカみたいなスタイルは羨ましいですね。バンドってこうでなきゃって思います。レコーディングスタジオの環境も当然良くて、音の波形を映し出すモニターとかもすごく大きいんですよね。レコーディングはProToolsという技術を使っていて、例えば、ドラムが実際には叩けないフレーズもつなげることができる。そういった制作の裏側を見れるところもおもしろいですね。驚いたのは、バンドでセラピストを雇っていること。一人ひとりがカウンセリングを受けるところも撮影されていて。メンバーの苦しみや葛藤、ビックアーティスト故の苦悩も伝わってくる。バンドのリアルな姿を見ることができる作品だと思います。
『メタリカ:真実の瞬間』
2004年/アメリカ/監督:ジョー・バーリンジャ―、ブルース・シノフスキー/パラマウント
伝説のヘヴィメタルバンド・メタリカに密着した作品。音楽シーンの最前線を走り続ける彼らの、苦悩や葛藤を映し出す。
メタリカというバンドに密着した作品で、レコーディングの様子や制作の裏側がよく描かれています。当時のメタリカは、とにかく仲が悪いんですよね。笑っちゃうくらいにケンカをしていて。特に印象的だったのは、ミーティング中にドラムのラーズが、ボーカルのジェイムズに「ファーーック」と、顔を近づけて怒鳴るシーン。本当にこんなことしてるのって、疑っちゃうくらいわざとらしいんですけど、あれは最高でしたね。僕は自分の意見のある人と仕事がしたいと思っていて。自分が100%いいと思ったものに対して、いやこれもいいんじゃない?って意見があったら、もっと良くなるじゃないですか。だからメタリカみたいなスタイルは羨ましいですね。バンドってこうでなきゃって思います。レコーディングスタジオの環境も当然良くて、音の波形を映し出すモニターとかもすごく大きいんですよね。レコーディングはProToolsという技術を使っていて、例えば、ドラムが実際には叩けないフレーズもつなげることができる。そういった制作の裏側を見れるところもおもしろいですね。驚いたのは、バンドでセラピストを雇っていること。一人ひとりがカウンセリングを受けるところも撮影されていて。メンバーの苦しみや葛藤、ビックアーティスト故の苦悩も伝わってくる。バンドのリアルな姿を見ることができる作品だと思います。
『メタリカ:真実の瞬間』
2004年/アメリカ/監督:ジョー・バーリンジャ―、ブルース・シノフスキー/パラマウント
孤高の天才ゆえの魅力
ありのままが一番素敵
ありのままが一番素敵

-STORY-
世界中のアーティストたちを魅了し、2019年に他界したダニエル・ジョンストンの伝記。
この作品を観た人に問いたい。世界中の人が全員ダニエル・ジョンストンだったら、どう?って。僕は、戦争のないやさしい世界になっていると思うな。ダニエル・ジョンストンは、天才アーティストではあるんですけど、統合失調症と双極性障害を患っているんです。周りのことは気にせず、実家でずっと引きこもって曲を作ったり、絵を描いたり、ふにゃ~としているんですよね。だから演奏も下手だし、かっこいい見た目でもない。でも、それでいいんだって思うし、むしろ彼のように自由であるべきだよなって。世間の評価は関係なくて、すべては自分の心の満足のため。彼は、自分の家で録音をした曲をカセットテープにして配り、みんなに曲を発表していたんです。その中の出会いがきっかけで、世界的に注目される。つまり彼は、純粋に自分が好きなものにコツコツ向き合っていたら、結果的に世間に見つかった。僕は、必ずしもものを表現するっていうのは、誰かに認めてもらわなきゃいけないわけではないと思っていて。だからこそ、この事実は本当に素晴らしい。自分は自分だし、みんなはみんなだよねっていう、個人主義的な生き方はすごくいいなと思います。だから、世界中が全員ダニエル・ジョンストンだったら、いい意味で他人に構うことなく自分を軸に生きられる。争いなんて絶対に起こらない、やさしい世界になると思いますね。
『悪魔とダニエル・ジョンストン』
2005年/アメリカ/監督:ジェフ・ファイヤージーグ/トルネード・フィルム
世界中のアーティストたちを魅了し、2019年に他界したダニエル・ジョンストンの伝記。
この作品を観た人に問いたい。世界中の人が全員ダニエル・ジョンストンだったら、どう?って。僕は、戦争のないやさしい世界になっていると思うな。ダニエル・ジョンストンは、天才アーティストではあるんですけど、統合失調症と双極性障害を患っているんです。周りのことは気にせず、実家でずっと引きこもって曲を作ったり、絵を描いたり、ふにゃ~としているんですよね。だから演奏も下手だし、かっこいい見た目でもない。でも、それでいいんだって思うし、むしろ彼のように自由であるべきだよなって。世間の評価は関係なくて、すべては自分の心の満足のため。彼は、自分の家で録音をした曲をカセットテープにして配り、みんなに曲を発表していたんです。その中の出会いがきっかけで、世界的に注目される。つまり彼は、純粋に自分が好きなものにコツコツ向き合っていたら、結果的に世間に見つかった。僕は、必ずしもものを表現するっていうのは、誰かに認めてもらわなきゃいけないわけではないと思っていて。だからこそ、この事実は本当に素晴らしい。自分は自分だし、みんなはみんなだよねっていう、個人主義的な生き方はすごくいいなと思います。だから、世界中が全員ダニエル・ジョンストンだったら、いい意味で他人に構うことなく自分を軸に生きられる。争いなんて絶対に起こらない、やさしい世界になると思いますね。
『悪魔とダニエル・ジョンストン』
2005年/アメリカ/監督:ジェフ・ファイヤージーグ/トルネード・フィルム
感動と興奮が入り混じる
30年を綴った旅路の記録
30年を綴った旅路の記録

-STORY-
ニール・ヤングと、クレイジー・ホースのツアーに密着。過去の演奏シーンやインタビューも織り交ぜて綴る、感動と興奮の記録。
世界的に偉大なシンガーソングライターのニール・ヤングと、彼の盟友であるバンド、クレイジー・ホースのツアーに同行した作品。監督のジム・ジャームッシュは、もともとニール・ヤングの大ファンなんですよね。『デッドマン』という映画では、彼に音楽をお願いしたほど。そういった経緯があって実現したのがこの作品なんだと思います。ツアーに同行しているので、移動するときのバスの中での様子も描かれていて。道中の景色とかも、すごくきれいなんですよね。ほかにもニール・ヤングがメンバーに怒っている場面や、メンバー間の軋轢なんかも描かれています。演奏はもちろんですが、メンバーの心の動きや表情にも注目してほしいです。監督と被写体の信頼関係があったからこそ、撮れた映像だと思います。とにかく憧れのニール・ヤングのツアーに参加していることの喜びや興奮が、ひしひしと伝わってきますね。ジム・ジャームッシュは世界的な名監督なので、ドキュメンタリーとしてのクオリティもすごく高い。昔はミュージシャンでもあったので、映像の中での音楽の使い方もうまくていいんですよね。ニール・ヤングを好きな方はもっと好きになるし、知らない方でも、単純に一つの映画として楽しんでもらえる作品。バンドがツアーを回る様子がよくわかるし、観たあとにはきっと、ニール・ヤングが聞きたくなると思います。
『イヤー・オブ・ザ・ホース』
1997年/アメリカ/監督:ジム・ジャームッシュ/アスミック
ニール・ヤングと、クレイジー・ホースのツアーに密着。過去の演奏シーンやインタビューも織り交ぜて綴る、感動と興奮の記録。
世界的に偉大なシンガーソングライターのニール・ヤングと、彼の盟友であるバンド、クレイジー・ホースのツアーに同行した作品。監督のジム・ジャームッシュは、もともとニール・ヤングの大ファンなんですよね。『デッドマン』という映画では、彼に音楽をお願いしたほど。そういった経緯があって実現したのがこの作品なんだと思います。ツアーに同行しているので、移動するときのバスの中での様子も描かれていて。道中の景色とかも、すごくきれいなんですよね。ほかにもニール・ヤングがメンバーに怒っている場面や、メンバー間の軋轢なんかも描かれています。演奏はもちろんですが、メンバーの心の動きや表情にも注目してほしいです。監督と被写体の信頼関係があったからこそ、撮れた映像だと思います。とにかく憧れのニール・ヤングのツアーに参加していることの喜びや興奮が、ひしひしと伝わってきますね。ジム・ジャームッシュは世界的な名監督なので、ドキュメンタリーとしてのクオリティもすごく高い。昔はミュージシャンでもあったので、映像の中での音楽の使い方もうまくていいんですよね。ニール・ヤングを好きな方はもっと好きになるし、知らない方でも、単純に一つの映画として楽しんでもらえる作品。バンドがツアーを回る様子がよくわかるし、観たあとにはきっと、ニール・ヤングが聞きたくなると思います。
『イヤー・オブ・ザ・ホース』
1997年/アメリカ/監督:ジム・ジャームッシュ/アスミック
続きは本誌で!
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