GRAFFITI CONTENTS
カメラが捉えた事実の断片、監督の問題意識、被写体への想い。さまざまな複雑 性を帯び一つの作品となった映像作品の数々。そんな魅力あふれるドキュメンタリー をジャンルごとに総計100本紹介します。もしかしたら、この中からあなたの人生を 変える、かけがえのない作品を見つけることができるかも。
鈴木マサカズが選ぶドキュメンタリー作品「難病」

鈴木マサカズ(50)漫画家
WEBサイトくらげバンチにて『ケーキの切れない非行少年たち』連載中。第6回さいとう・たかを賞受賞。
WEBサイトくらげバンチにて『ケーキの切れない非行少年たち』連載中。第6回さいとう・たかを賞受賞。
認知症という難病を
前向きに捉えて勇気をもらえる
前向きに捉えて勇気をもらえる

-STORY-
両親の老老介護の現場に二人の娘である信友直子監督がカメラを向ける。
87歳で認知症を発症した母と、それを介護する歳の父。老老介護という深刻な問題が、この作品ではどこかユーモラスに描かれているのが印象的でした。母が認知症を患っていることが発覚し、次第に家事もできなくなるのですが、当の二人は悲観的ではないんです。介護のために、歳にして初めて家事に挑戦する父や、大晦日に娘の信友監督へ向かってぼけますからよろしくお願いしますと笑う母。現実を受け入れ生きていく愛嬌に溢れた二人の姿が映し出されていて、漫画的に言うと二人のキャラが立っている。だから決して明るいとは言えない題材も、どこか明るい気持ちで観ることができるんです。
物語の終盤、母が死にたいと泣き出すシーンがあるのですが、その場面でも信友監督は絶対に母からカメラを背けません。そこには、作り手としてこの場面は逃せないというエゴに加え、「あなたの人生、やりたいことをやってほしい」という父の気持ちをくむ、娘としてのやさしさがあったのではないかと。ユーモアとやさしさたっぷりで描かれているからこそ、認知症を前向きに考え直すきっかけになる作品だと思います。
『ぼけますから、よろしくお願いします。』
2018年/日本/監督:信友直子/ネツゲン
両親の老老介護の現場に二人の娘である信友直子監督がカメラを向ける。
87歳で認知症を発症した母と、それを介護する歳の父。老老介護という深刻な問題が、この作品ではどこかユーモラスに描かれているのが印象的でした。母が認知症を患っていることが発覚し、次第に家事もできなくなるのですが、当の二人は悲観的ではないんです。介護のために、歳にして初めて家事に挑戦する父や、大晦日に娘の信友監督へ向かってぼけますからよろしくお願いしますと笑う母。現実を受け入れ生きていく愛嬌に溢れた二人の姿が映し出されていて、漫画的に言うと二人のキャラが立っている。だから決して明るいとは言えない題材も、どこか明るい気持ちで観ることができるんです。
物語の終盤、母が死にたいと泣き出すシーンがあるのですが、その場面でも信友監督は絶対に母からカメラを背けません。そこには、作り手としてこの場面は逃せないというエゴに加え、「あなたの人生、やりたいことをやってほしい」という父の気持ちをくむ、娘としてのやさしさがあったのではないかと。ユーモアとやさしさたっぷりで描かれているからこそ、認知症を前向きに考え直すきっかけになる作品だと思います。
『ぼけますから、よろしくお願いします。』
2018年/日本/監督:信友直子/ネツゲン
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