GRAFFITI CONTENTS
カメラが捉えた事実の断片、監督の問題意識、被写体への想い。さまざまな複雑 性を帯び一つの作品となった映像作品の数々。そんな魅力あふれるドキュメンタリー をジャンルごとに総計100本紹介します。もしかしたら、この中からあなたの人生を 変える、かけがえのない作品を見つけることができるかも。
有坂塁が選ぶドキュメンタリー作品「東海テレビ制作」
有坂塁/移動映画館長
2003年に移動映画館「キノ・イグルー」を始動。東京を中心に、上映イベントを開催。Instagram:@kinoiglu
本気の大人に出会うための
東海テレビ劇場版第一弾
-STORY-
戸塚ヨットスクール事件の刑期を終え、スクールに復帰した校長の現在に密着。

 教育現場での体罰が、司法で悪と認定されるきっかけとなった戸塚ヨットスクール事件。そんな日本の教育を考える上で重要な事件に、東海テレビは年以上も密着してきました。長期取材という地方ローカル局の強みを生かした映画づくりに加え、東海テレビは体罰のシーンを全くカットしない。これほど生々しい映画はなかなかなく、かなり驚きました。被写体である戸塚校長は、社会からこぼれ落ちた人たちの受け皿を作り、社会復帰させたいという純粋な正義を持つ人。戸塚校長の「体罰がなくなり、教育は良くなったのか?」という問いは、本質的な議論がないまま表向きだけきれいになってしまった現実を突きつける。体罰は絶対にいけないことだけど、先生も迂闊に子どもたちに怒れなくなった今、学校は本気になれる環境ではなくなってしまった。教育に限らず、問題の本質を考え直すための1本としてもおすすめ。全編を通して、本気の戸塚校長に東海テレビが真っ向にカメラを向けた本気な映画。頭をハンマーで殴られたような衝撃を受けると思いますよ。

『平成ジレンマ』
2010年/日本/監督:齊 藤潤一/東海テレビ放送
続きは本誌で!
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