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笑顔は世界共通言語! いろいろな方に一番笑える名作映画を語ってもらいました
笑いと感動を与える唯一無二のヒーロー。笑えるチャップリン映画編
が〜まるちょば<HIRO-PON>マイムアーティスト
1999年、が~まるちょばを結成し世界の35ヶ国以上で公演をおこなう。2019年からは、ソロアーティストとしてが~まるちょばを継続。東京2020オリンピック開会式では、クリエイティブチームのクリエイターとして参加。
笑いを芸術まで押し上げた圧倒的な演技力とアイデアの塊
 黄金狂時代の原題が“ゴールドラッシュ”なんですけど、18世紀に世界中で金脈が見つかり、雪山で一攫千金を狙った人の遭難事故が多発したんですよ。チャップリンも劇中で遭難して、あまりの空腹に自分の履いていた靴を食べるシーンがあるんです。危機的状況なのに観客は笑えるんですよね。ミニチュアのセットや小道具を盛り込み、アイデアや動きでシリアスな雰囲気の中で笑いを起こしている。強い風が吹く中、小屋から出ようとするシーンも、映像やCGの力ではなく、チャップリンの演技だけで風に押し戻される動きを表現しています。機械的な技術に頼るのではなく、肉体的な芝居で笑いを起こす表現に、コメディアンとしての真髄を感じますね。
 笑いにも種類があると思っていて、大人だと文化的要素で笑うことがあるけど、子どもの反応は世界共通でビジュアルや動きなんですよ。そして、完璧主義者のチャップリンは、笑いに加えて感動を与えることも重視している。つまりサイレント映画を、エンタメだけで消費されるものではなく、芸術作品としても捉えていたと思うんです。僕がパントマイムを始めたのも、この先、どう生きるかを考えたときに「誰かの記憶の中に残りたい」と強く思ったことがきっかけ。チャップリンは人の琴線に触れて笑いと感動を届けてくれる、ヒーローのような存在。心の中に残り続ける、大切な芸術作品です。
妥協は絶対にしない、感動と笑いを操る孤高のコメディアン
トーキーの時代にサイレントを貫いた、チャップリンの強いこだわりを感じられる作品。盲目の少女が放浪者のチャップリンをお金持ちと勘違いするシーンで、全体の撮影時間の3分の2を使用したんです。道に止まっていた高級車のドアを開けて、後部座席を通過し出てきたチャップリンを、盲目の少女が車の持ち主だと勘違いするという仕掛け。そのディテールがとても細かくて、たった3分ほどしかないシーンなのに、とても濃密。セリフがない中で、丁寧に動きや魅せ方を計算していて、妥協しない姿勢を感じますね。
 この作品は感動の要素が強い内容ではあるものの、コメディとしても秀逸。例えば、少女の目の手術代を稼ぐたにチャップリンがボクシングの試合に出るシーン。強い相手に頭を使ってインチキやダンスの要素を取り入れて戦う姿はおもしろいですね。レフェリーを盾にしたり、自分でゴングを鳴らしたり。サイレントが故に、リズミカルな展開が観る人を引き付けるんです。
 ラストシーンでは放浪者のチャップリンが、視力を取り戻した少女を見て微笑みかけるのですが、その姿に多くの観客が涙を流しました。チャップリンの笑顔に隠された複雑な心境を読みとったことで涙につながったんです。それって、感動を表す一つ笑いの形だと思うんですよね。数ある映画の中でも最高のラストと称される素晴らしいシーンを、ぜひ観てほしいですね。
現代を予見する社会風刺、アナログで作りあげた名作映画
 世界恐慌の時代に作られた映画で、特に印象的なのは冒頭のシーン。家畜である羊の群れが映像で流れて、クロスフェードして通勤途中の人間の映像に切り替わるんです。機械の一部のように人間が働く現代を皮肉っていて、チャップリンのメッセージが強く感じられます。途中、失業者によってストライキデモが起こり、チャップリンが間違って先頭に来てしまったことで投獄されるシーン。ここのテンポがすごく良くて、自然な場面切り替えはさすがの一言。ほかにも、普通に歩くシーンで、あえてつまづく動作を入れるなど、飽きさせないように笑いの要素を畳み掛けてくる。通常であればセリフでキャラクターの関係性を見せるところを、すべて動きだけで理解させていることに圧巻ですね。それに、どの演技やシーンも、間が絶妙。撮影したあとも自分で編集するからこそ、笑いに重要な空気感を生み出せているんだと思います。
 この作品に限らず、チャップリンは監督、俳優、編集など、作品のすべてに関わっていて、マルチな才能が凄まじい。後半のチャップリンが歌うシーンは圧巻。歌なのに言葉を使わない。トーキーの時代に、最後の抵抗としてサイレントの精神を貫いたんですよね。セットや手法に関しても、歯車や逆再生など、画期的なビジュアルをアナログで作っている。チャップリンが生み出した表現の幅は、映画界の重要な財産だと思います。
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