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日本にはたくさんの名作がある。日本を代表する作家、監督の作品について、熱狂的なファンの方々にベスト3をあげてもらいました。いつの時代も愛される、日本の名作に出会おう
土谷未央が選ぶ [成瀬巳喜男作品BEST3]

監督 prof.
成瀬巳喜男

1905年東京都生まれ。日本の映画監督。『チャンバラ夫婦』で監督デビュー。メロドラマの天才、女性映画の巨匠と呼ばれ無声映画から発声映画の時代、モノクロからカラーの時代に充実した作品を残す。享年63歳。

Recommender.
土谷未央
(36)菓子作家

cineca(チネカ)で、物語性のある菓子を提案・制作。食の持つ力を信じ、価値観を模索する。
女性の変化を同時に観られるのがおもしろい
[ BEST.1 ]『娘・妻・母』960年 日本/出演:三益愛子ほか/東宝

 女性は娘、妻、母と3形態に変化していく。必ずしもみんながそうではないけど、その変化を強いられることもあ る。母は誰かの妻であり誰かの娘であったり、妻だったけど任務が終わって娘に戻る人がいたり。見事にその変化を描いていて、私が知らない女を一つの映画で同時に見ることができるんです。主人公であり長女の早苗が、やさしくて良い人として描かれているんですけど、そうとも限らない。働いている次女の薫から見たら、早苗はお気楽に見えるかもしれない。決めつけるのではなく、それぞれの隠れた思いを探しながら観るのが、この映画の楽しいところなんです。
戦後の日本猫を飼う妻の軽快な返し
[ BEST.2 ]『めし』1951年 日本/出演:上原謙ほか/東宝

 毎日夫に「めし!」と言われて、所帯やつれした妻を原節子さんが演じているのが新鮮。動物があまり出てこない成瀬作品には珍しく、猫も出てきます。夫婦の間にある空虚を妻が感じているんですけど、会話が妙。当時、姑や兄弟と一緒に暮らしている夫婦も多く、「二人で暮らしていて良いわね、普段どんな話してるの?」と、友人から聞かれるシーンがあって。それに対して妻は「猫飼ってるの」と返すんです。全然答えになっていないけど、軽快で良い返しだなって。夫婦の抱える虚しさもあるんだけど、楽しさもあるような。私もそんなふうに、軽やかに答えてみたいですね。
こんなにひどい描き方をするんだと観るたびに落ち込みます
[ BEST.3 ]『浮雲』1955年 日本/出演:高峰秀子ほか/東宝

 不倫から始まり、恋をした男に裏切られ死んでいく。映画に救いを期待する観客を、常に裏切り続けるんです。聡明な役が多い高嶺秀子さんが、ここまでぞんざいに扱われているのも衝撃でしたね。成瀬監督は、女を描くために男を使っている演出が多いんですけど、この作品では森雅之さん演じる富岡のダメさもすごく光っていて。本当にダメ男を描くのに長けた監督なんです。最後、ゆき子が死ぬときに、富岡が号泣するシーンが素敵。ずっと見たかった富岡の素直な気持ちを、やっと見れた…って。ゆき子が生きていたら、泣いて喜んだろうにと、私自身も気持ちを重ねてしまいました。
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