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日本にはたくさんの名作がある。日本を代表する作家、監督の作品について、熱狂的なファンの方々にベスト3をあげてもらいました。いつの時代も愛される、日本の名作に出会おう
にゃるらが選ぶ [北野武作品BEST3]
監督 prof.
北野武


ビートきよしと漫才コンビ“ツービート”を結成し、お笑いタレントとしてキャリアをスタート。1983年に『戦場のメリークリスマス』で俳優として注目を集め、『その男、凶暴につき』で主演も兼ねて、映画監督デビュー。代表作に『アウトレイジ』『座頭市』がある。

Recommender.
にゃるら(27)作家

沖縄県出身の作家。主にオタクカルチャーやインターネットについての書籍などを執筆。現在は、漫画原作の執筆やインディーゲームの企画・シナリオをおこなっている。
日常を生きるヤクザで紐解くたけしの死生観
[ BEST.1 ]『ソナチネ』1993年 日本/出演:ビートたけしほか/松竹

 沖縄を舞台に二つのヤクザが抗争をする話なのですが、まず音楽がすごい。セリフもBGMも少ない中、効果的に久石譲さんの曲が使われていて、それだけでおもしろくない訳がない。作品全体を通して悪いやつは死ぬとか、適当に生きてるやつは罰を受けるとか、たけしの死生観が現れているんですけど、抗争よりもヤクザの日常シーンを長く描いているんです。ヤクザも人を殺しているので、社会的には罰せられなきゃいけない存在ではあるんですけど、そんなヤクザにも、死を忘れるような日常があるんだなって。とは言え、常に暴力的なことが日常になっているから、主人公のたけしはもう命を亡くすことに何も感じなくなっている。たけしのセリフで「死ぬことばかり考えちゃうと本当に死にたくなっちゃうよ」というセリフがあるんですけど、いつか訪れる自分の死を、ずっと隣り合わせにして生きているんですよね。
 僕も一回、適応障害っていうものになったことがあって。そのときはやっぱり死ぬことばかり考えてしまった。あのまま適応障害が続いていたら、劇中のたけしのように僕もこめかみにリボルバーを当てていたかもしれないなって。ヤクザなので、もちろん罰としての死もあるけれど、死生観を持つたけしの生き様で何かを感じてほしいですね。
美に全振りしたたけしの愛の逃避行
[ BEST.2 ]『HANA-BI』1997年 日本/出演:ビートたけしほか/オフィス北野、日本ヘラルド映画
 人間の最大の価値として「真善美」という言葉があるんですけど、たけしがその中で美を全面に出した作品。元警察官の主人公であるたけしが銀行強盗をして、そのお金で余命幾ばくかの奥さんと余生を楽しむという内容。奥さんと一緒に、最後幸せに過ごせるんだったらって、残りの自分の人生を捨てる美学が込められているんです。僕は本気で人を愛したことはないんですけど、こうありたいなってすごく思いますね。主人公が警官時代に、同僚を打ち殺した殺人犯を追い詰めて撃つシーン。死体になったあともバンバンと撃ち続けたので、周りから狂人扱いされちゃうんです。でも、それって同僚の死を謹んでのこと。暴力的だけど愛情深い主人公の描き方がうまいなって。
 そして、何と言っても見どころは画面構成の美しさ。真っ白い雪の上に赤い血がつくグロテスクなシーンもあるのですが、映像美へのこだわりがすごい。画面展開の中で最大限に美しくなるように作れらているんです。今まで淡々とした日常と暴力を描いてきたたけしが、愛をテーマに作ることで、王道すぎて逆に誰もやらなかったオチも描かれている。展開が読めるからこそ、自分の予想をはるかに上回る美しいことが画面上で起こり続けるおもしろさや、奥さんとの何気ないやりとりが生きてくるんですよ。
たけしファンに送るご褒美のような作品
[ BEST.3 ]『TAKESHIS'』2005年 日本/出演:ビートたけしほか/松竹、オフィス北野

 たけし本人と、たけしに似たしょうもない芸人が出会い、夢や現実が交差することでたけし自身の悩みや葛藤が垣間見られる作品。『TAKESHI S’』というくらいなので、本人の人間性がふんだんに描かれていて。冒頭10分くらいは日常が映され、そのあとたけしに憧れている売れない方のたけしの話になるんですが、どんどん夢と現実がわからなくなっていくんですよ。その夢の中で、たけしが怖いと思っているものや、好きなものが出てきて。観客には伝わりづらいけど、断片的にたけしの自意識を感じられる。夢のシーンではたけし作品のオマージュがたくさん出てきて、ファンにとってはご褒美のような作品。そもそも夢って何かが伝わるものじゃないし、自閉するような自問自答の連続ですからね。
 特に印象的なのは女性関係。モテるが故にいろんな女の人を跳ね除けたり、受け入れたりしていて、それに罪悪感を感じてるんです。撮影が終わったあと、関係があった過去の女性全員に電話で謝ったというエピソードもあるくらい。包み隠さず赤裸々に語っているのがすごいですね。テレビのトップに立った人でも、自分たちと同じような悩みや葛藤があるんだなって。オマージュが多いので、いろんなたけし映画を観てからだと、より楽しめる作品です。
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