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日本にはたくさんの名作がある。日本を代表する作家、監督の作品について、熱狂的なファンの方々にベスト3をあげてもらいました。いつの時代も愛される、日本の名作に出会おう
ちゃんもも◎が選ぶ [坂口安吾作品BEST3]

著者 prof.
坂口安吾


日本の小説家、評論家、随筆家。終戦直後に発表した『堕落論』、『白痴』により時代の寵児となり、無頼派・新戯作派と呼ばれて作家としての地歩を築いた。1955年、脳出血により死去。48歳没。

Recommender.
ちゃんもも/アイドル、プロデューサー、作家

アイドルグループ「バンドじゃないもん!MAXX NAKAYOSHI」のメンバーとして活動中。「テラスハウス」にも出演。2018年にはサスペンス小説『刺激を求める脳』を執筆。
自分の美しさを追求する姿勢に胸打たれる
[ BEST.1 ]『桜の森の満開の下・白痴 他十二篇』坂口安吾 著/講談社

 現代で桜といえば美しいイメージがあるけど、江戸時代では恐ろしいものとされていたんです。主人公の山賊も桜の下に来ると恐ろしさを感じるのです。ある日、盗みに入った家の美しい容姿の女房をさらうのですが、この女房がかなりのくせ者で。7人いた山賊の女房のうち、6人をその男に殺させてしまうんですよ。高校2年生のときに読んだのですが、表現のグロさに衝撃を受けて。その女房が、殺されたほかの女房の生首を、おままごとのようにして一人遊びをするシーンがあるんです。グロテスクな描写なのに、すごく美しく見えた。自己を解放して、自分の中にある狂気と美学が絶頂を迎えたんですよね。
 その当時、自分はギャルだったんですけど、そのときの自分の悩みと重なる部分がすごくあった。自分のギャルという一部分だけで、勝手に他人にカテゴライズされることが多かったんです。教室や電車の中でこの本を読むことで、外気を遮断してこの美しい世界に陶酔できたし、周りにバリアを張っていました。ポストコロナの世界で自分の内面を探究する時間が必要だと思うし、私が読んだときと同じ女子高生にぜひ読んでほしいですね。自分が美しいと思うことがどれだけ周りと違っていても、突き進んで行ってほしいな。
自分たちで決める恋愛のあり方
[ BEST.2 ]『白痴』坂口安吾 著/新潮社

 坂口安吾の短編小説。冒頭にある『何処へ』がすさまじくて。安吾の語り口調で、自分のあり方や正しさとは何か?っていうのが繰り返し描かれている。女性に対しての距離感を独自の視点で語っていて、女性が男性を使って精神的に満たされる。今でいう、マウントみたいな女性のエゴな心を言語化してくれているんです。かなり偏りがあるのですが、すごく納得できるんですよね。
 私、アセクシャルなので、恋愛という形を楽しめないし、好きじゃないんですよ。なので、安吾の女性に対する考えはすごく共感できるんです。世の中にあるいろんな男女のいざこざに対して、巻き込まれているだけの人って結構いると思うんですよね。でも、それぞれが恋愛とか男女のあり方をルール的に享受するのではなく、自分たちで決められたらいいなって思うんです。『何処へ』の最後で「己の欲するものを捧げることによって真実の自足に至ること」って文があるんですけど、結局世の中の正しさでは到達できない魂の高さがあると思っていて。求める愛ではなく、無性の愛が真実なんじゃないかなって思う。自分の恋愛が楽しくないなって思っている人や、まったくもって恋愛をしない人は、読むと肩の荷が少し降りるんじゃないかな。
今の日本に足りない考えが詰まった作品
[ BEST.3 ]『堕落論』坂口安吾 著/新潮社
 第二次世界大戦直後の日本人に必要な精神や、生き方を描いた作品。今、まさにここにある考え方が必要だなと思うんですよね。作品冒頭に「半年のうちに世相は変わった」というセリフがあるんですけど、戦後の混乱についての文章がコロナ禍の現状と重なります。安吾は日本人の自我について、自分が絶対に正しいと思うことへの危険性や、正しくないことを自覚する重要さを堕落論で問いているんです。今、社会全体で誰かを悪者にして解決できたと勘違いしている国民が多い。騒ぎに便乗することで、あたかもそれが正義かのように振る舞っていて、自分自身で考えることを放棄している。それってただの堕落だし、そこから国民それぞれが意思を持たなければ、堕落論が問う真の堕落からは目覚めることはできないと思うんですよ。戦争は決して良いものじゃないけど、疫病とかって人類が生きていく中で起こりうることだし。社会の道徳や決まりに従うのではなく、一人一人が自我を持って行動することが大事なんだと思います。
 読みやすいうえに文章全部がパンチラインで、コロナ禍の現状で自分が何を軸に生きていくべきかが描かれている。日本人に足りない内側を探究する指南書として、トレンドになってほしい一冊ですね。
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