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日本にはたくさんの名作がある。日本を代表する作家、監督の作品について、熱狂的なファンの方々にベスト3をあげてもらいました。いつの時代も愛される、日本の名作に出会おう
田中一平が選ぶ [鈴木清順作品BEST3]
監督 prof.
鈴木清順


1923年東京生まれ。日本の映画監督。『港の乾杯 勝利をわが手に』で監督デビュー。『ツィゴイネルワイゼン』はベネチア国際映画祭で審査員特別賞を受賞。スタイリッシュな独特の映像センスは「清順美学」と称され、映画界に多大な影響を与えた。


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田中一平(31)俳優、モデル

1989年新潟県生まれ。俳優、モデルとして活動。映画やCM、MVなど多方面で活躍。個性的で力強い雰囲気が魅力で、ファッションブランドのルックブックなど多数の媒体で活躍している。
尖ったままでいいと大先輩に後押しされた
[ BEST.1 ]『殺しの烙印』1967年 日本/出演:宍戸錠ほか/日活

 すべてのカットが、絵や写真のように美しい。モノクロ映画なんだけど、白と黒の使い方が独特だし、人物の配置や構図も常に想像を超えてくるんです。特に、宍戸さん演じる主人公の花田が、裸でメロンを転がしているシーン。切り替わった瞬間、言葉にならない衝撃が走ります。美術館で名画を目にしたときの感覚に近いのかな。それに、いつも以上に宍戸さんが自由に振る舞っている気がします。座ったまま喋ってもいいセリフを、グニャグニャと動きながら言ったり、風船で遊ぶシーンもウキウキしていて遊び心があったり。清順監督との信頼関係が強くないと、ああいう芝居はできないと思うんです。シナリオはすごくシンプルなんだけど、物語と直接関係しないところにこそ、この作品の良さがあるのかなって。
 初めて観たのは大学生のとき。当時、それなりに尖ってたんですよ。昼食は毎日一人で食べていたし、孤立していたかった。そんなときこの作品に出会って、僕はこのままでいいんだと思えたんです。清順監督って、93歳まで生きているのに、ずっと純粋で少年のよう。媚びずに好きな映画を作っていて惚れるなって。だから、みんなが就活で髪を黒くしたとき、僕は髪を真っ赤に染めた。好きなことにまっすぐ生きる。大先輩に後押しされた気分でしたね。
これぞ男のロマン江戸っ子精神に憧れる
[ BEST.2 ]『東京流れ者』1966年 日本/出演:渡哲也ほか/日活
 渡哲也さん演じる本堂が口ずさむ、流れ者の歌が渋いんです。これを観た当初、昔の歌謡曲をまともに聴いたことがなく、とても新鮮でした。劇中、たびたびこの歌が流れるんですけど、歌詞を喋る感じというか、セリフと歌が混在しているよう。新しい芸術に出会ったような感覚でしたね。白黒で始まって、途中から色が加わるトリックも印象的。清順監督の妙とも呼ばれる色彩が大胆で、赤の出し方が攻撃的なんです。アクションシーンも際立っていて、銃撃戦でピアノが鳴る演出とか、すごく粋ですよね。
 そもそも、タイトルがすごくかっこいい。孤独感がある人物像って惹かれるものがあります。孤立したいと思っているけど、本当は仲間もほしい側面があって、僕も共感できる。流れ者のように、居場所を構えずに生きるってかっこいいなって。以前、4畳半の風呂なし部屋に住んでいたことがあるんですけど、そういう環境に戻りたいという気持ちがあるんです。常に落ち着いていたくないというか、本堂も自ら望んで流れ者の道を選んでますしね。僕の好きな清順監督の江戸っ子精神が色濃く出ていて、憧れるんです。人生に追い詰められている人におすすめしたいですね。時の流れのまま、生きていけばいいさって。これぞ、男のロマンです。
夢か現か幻か、頭の中を覗いているような映画体験
[ BEST.3 ]『ツィゴイネルワイゼン』1980年 日本/出演:原田芳雄ほか/リトル・モア

 「現世は夢である」。その言葉を放った清順監督の、頭の中にあるものが滲み出た作品。現実、夢、現在、過去がごっちゃになっていて、なんだかすごいものを観たぞ…と、ゾクゾクする不思議な力があるんです。清純監督の死生観が見えて、映画の中では、死者と生きている人との境目がない。「生きている人間は本当は死んでいて、死んでいる人が生きているのよ」という豊子のセリフでもあるように、掴みどころのない世界なんです。どうせこの世なんて夢なんだから、俺の好きなことをとことんやるんだ!という、監督の潔さがすごく伝わってきますね。評価を気にせず、純粋に作りたいものを作る。それが評価されているから、おもしろいなって。他人から向けられる目を恐れない、清順監督の独自のイズムが、僕にも通じているんですよ。自分も好きな表現で、貫いていきたいなって。
 突然戸が閉まったり、背景が赤くなったり、日常では起こり得ないことがバンバン起こるのがいい。映画は奇妙で摩訶不思議だからこそ、おもしろいんです。それでいて、現実でもありうるかもしれない謎の説得力。人間が思いつくことは全部できうるし、意外と思いつかないことが突然降りかかるもの。清順監督は、僕の映画の先輩であり、人生の先生なんですよね。
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