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日本にはたくさんの名作がある。日本を代表する作家、監督の作品について、熱狂的なファンの方々にベスト3をあげてもらいました。いつの時代も愛される、日本の名作に出会おう
OSHIDAAYAが選ぶ [小津安二郎作品BEST3]
監督 prof. 
小津安二郎

1903年東京生まれ。1923年、撮影助手として松竹キネマに入社。1927年に時代劇『懺悔の刃』で監督デビュー。“小津調”と呼ばれる世界観で、無声映画、現代映画まで優れた作品を生み出す。代表作は1958年『東京物語』など。

Recommender.
OSHIDAAYA(40)ミュージシャン


20代でガールズデュオStoned Green Applesのギターボーカルとして活動、出産後はOSHIDAAYA名義で作品をリリース。年内に3作目のアルバムをリリース予定。
女性の意志が描かれた新しい小津映画
[ BEST.1 ]『小早川家の秋』1961年 日本/出演:中村鴈治郎ほか/東宝

 世界観の広がりや、その先の未来さえ感じてしまう後期の小津作品です。主人を亡くした小早川家の話なんですけど、未亡人の秋子に再婚の話、次女の紀子にも縁談の話が持ち込まれるんです。今までの小津さんの映画なら、お父さんが亡くなってしまったし、結婚します!っていう流れになると思うんですよ。当時、結婚は周りの決めたことに従うという風儀の側面があって。だけど、この二人は結婚する道を選ばない。女性が自分で自分の道を決めるという、新しい展開にハッとしました。また、作中の音楽も今までとは一味違う。作曲家の黛敏郎さんは、とってもダイナミックな音楽を作るんです。有名な俳優さんもたくさん出てきたり、気の合う同士が同じ仕草をする演出があったりして、まるで舞踏芸術を見ているかのようでワクワクしちゃうんです。
 新しい表現の連続ですが、小津さんの形式美の中で展開するので落ち着いて観賞できる。小津さんは自分のことをお豆腐屋さんっておっしゃっているんです。毎日毎日同じ映画を作り続ける。ときには、がんもどきや厚揚げを作るけど、とんかつを作ることはない。だから、普段の映画と同じように、すごくきれいで穏やかなんです。ぜひ、景色を見るような感覚で観てほしいですね。
ポルカ調の陽気な音楽が印象に残る父と娘の物語
[ BEST.2 ]『東京暮色』1957年 日本/出演:笠智衆ほか/松竹
 小津さんって、家の中の出来事を上手に描く人なんです。『東京暮色』は、愛人ができて家を出ていった母を持つ、姉妹と父親の話。父親は、娘たちが寂しい思いをしないよう大事に育ててきたのですが、妹の明子は不実な大学生に騙されて妊娠してしまう。そして、パッと亡くなってしまうんです。私自身、思春期の息子を持つ身ということもあり、最初から最後までつらい内容でした。だけど、スッと見ることができた。斎藤高順さんが作曲された、いわゆる小津さんらしい音楽の効果だと思います。明子が子どもを堕ろすときも、亡くなるときも、ポルカ調の陽気な音楽が流れている。それが、とっても自然なんです。
 小津さん自身、つらい戦争体験をお持ちの方。人の死も、すごく淡々としている。こちら側が、落ち着いて観ることができるのは、どのシーンもさっぱり描いているからかもしれないですね。3.11の震災のとき、私の息子は赤ちゃんだったのですが、オムツも店からなくなる事態で。このまま生きていけるのかとても不安でした。でもその日、青空だったんです。小津さんの映画はこの青空に似ている気がします。私たちは、死ぬまで生きないといけないから、あんまりドラマチックにしすぎると続かない。そんな“ケセラセラ”な生き方に気づかせてくれました。
静かに引き込まれる原節子と笠知衆の名演技
[ BEST.3 ]『晩春』1949年 日本/出演:原節子ほか/松竹

 数年前、フィルムで撮影された映画を修復するデジタルリマスター化の動きがあって、そのタイミングで鑑賞しました。結婚適齢期の娘は、嫁に行くよう父親に勧められるのですが、お父さんと一緒に暮らしたいと結婚の話を断るんです。この作品が好きな理由は、女優の原節子さんが初めて小津さんの映画に出演した一本だから。原さんが娘役、笠智衆さんが父親役を演じています。この親子のやりとりが何より素敵ですね。原さんはこの映画で三つの顔を演じ分けている。父親との生活を楽しむあどけない顔、結婚に迷い反抗する顔、そして決心をして旅立つ顔。そんな原さんに負けず、笠智衆さんの演技もさすがです。二人の会話は言葉が淡白なように感じるのですが、鑑賞者が自由に想像する余裕を与えている。感情を込めずに読み聞かせをする考え方に近い気がしました。激しい演技はしないけれど、静かに引き込まれていく魅力が二人にはあるんです。
 父親が娘に、人生とは何かを言い諭すシーンも印象的ですね。京都旅行の場面で、煮え切らない娘にまっすぐと向き合う父親の姿が頼もしく、私もお手本にしたい!と思ってしまいました。思春期は、なかなか言葉が届かないですからね。家族の映画なので、自分が置かれた状況や年齢で見方が変わっていくと思います。
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