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日本にはたくさんの名作がある。日本を代表する作家、監督の作品について、熱狂的なファンの方々にベスト3をあげてもらいました。いつの時代も愛される、日本の名作に出会おう
Licaxxxが選ぶ [ 寺山修司作品BEST3]
監督 prof.
寺山修司


1935年、青森県出身。日本の歌人、劇作家、詩人、映画監督。演劇実験室、天井桟敷主宰。言葉の錬金術師、アングラ演劇四天王のひとりなどの異名をとり、マルチに活動し膨大な量の文芸作品を発表した。長編映画作品『田園に死す』(芸術祭奨励新人賞)を脚本、監督。享年47歳。

Recommender.
Licaxxx(30)DJ、ビートメイカー


東京を拠点に活動するDJ、ビートメイカー。世界中のDJとの交流の場を目指すビデオストリームラジオ「Tokyo Community Radio」の主宰。 ファッションブランドの音楽プロデュースなどマルチな側面を併せ持ち多方面で活躍。
一番最初にびっくりさせられて視覚的にがっちりつかまれた
[ BEST.1 ]『田園に死す』1974年 日本/出演:八千草薫ほか/ATG

 高校生のとき、これはしっかりくらった(笑)。寺山修司の作品を初めて目の当たりにしたのは、本でも演劇でもなくてこの映画。大学受験の時期に、美術を学んでいて、人に対して表現するとは何かを考えていました。そんなときに、『田園に死す』の視覚的な衝撃をくらい、投げかけられる社会性に脳をつかまれた。タイトルバックから唖然とするんです。最初に詩がバーっと出て、主題歌が鳴り、驚くほど鮮やかな色彩の連続。今でも年1回は必ず見返しています。煮詰まったときに、ふと手に取りたくなる。そうか、寺山修司ってこういう人だった。自分はこういうエンターテインメントを発信できているだろうかと、原点回帰できるんですよね。
 寺山修司のコンプレックスが全面的に出ているのが良くて。それはつまり、すべて自分が実際に感じたところから始まっているから。母と二人だけの生活に嫌気がさしている少年が家出をするけど、最後は結局、母親と向き合って食事をする。彼自身も母親を憎んではいるけど、一番愛してる人だったんでしょうね。作中に、柱時計を彼のメタファーとして使用しており、本人をモチーフにしている表現が多いんです。さまざまなものに意味を持たせて使っているところは、エゴが強くて結構好きですね。自分が特に影響されたのは、寺山修司が元祖メディアミックスだということ。詩や、演劇、小説、映像など、横断している要素を互いに生かして体現していて。自分の肩書きを「寺山修司」だと本人は言っているけど、まさしくその通り。ジャンルに縛られずに表現する姿は、純粋に憧れるし私の軸になっています。
社会の不平等さを試行錯誤して表現
[ BEST.2 ]『寺山修司実験映像ワールド vol.4』2006年 日本/出演:新高恵子ほか/ダゲレオ出版

 『寺山修司実験映像ワールド vol.4』に収録されている『トマトケチャップ皇帝』は、寺山修司の周年の展示でみたのが初めてでした。彼は舞台も手掛けるので、美術や衣装が独特でおもしろく、すべてに意味がある。性的な表現も多いですが、観る時代によって見え方はだいぶ変わるし、私も当時は混乱したので受け手によって解釈も試されると思います。静止画で観ても、印象的な描写が多くて脳裏に焼きつく。映像を作ることに対して挑戦していたことがダイレクトに伝わってきます。寺山修司の世界観を、より理解することができる実験映像集です。長編と短編で作られていて、ここで実験している映像が、のちの作品にも生きてくるんですよ。寺山修司の映像作品を知るには、欠かせない作品でもありますね。
 子どもが皇帝になって、独立国家を築く。そのルールに大人が虐げられているという状況の話。大人という存在に対して、全国の子どもたちが一揆を起こすんです。共産主義の否定、独立国家での無茶苦茶なルールを皮肉っていますよね。思春期が抱く大人へのコンプレックスや搾取、社会へのメッセージを青臭くも寺山修司らしく描いています。彼は派手な表現やモチーフを多用したデフォルメが多いけど、自分の周りの小さな社会からスタートして大きな社会にちゃんとメッセージを発信しているんですよね。そこはすごく共感できる。学生運動をしていた寺山修司ならではだし、考えがよくわかります。私も、ただ提示されるものに満足するのではなく、きちんと声をあげることができる人間でありたいなって思いますね。
今の若い世代の方にも衝撃的だと思います
[ BEST.3 ]『書を捨てよ町へ出よう』1971年 日本/出演:佐々木英明ほか/ATG

 「映画館に座っててもなんも起きねえよ」ってセリフが好き。煙が立ちのぼる真っ暗闇の中で、主人公が語りかけてくるんです。舞台人である寺山修司だからこそだなって。スクリーンの中から劇場の観客に向かって、言葉を投げかける演出にグッときます。さまざまなジャンルの派手な音楽が入ってくるんですけど、この作品はどの楽曲も強烈。寺山作品の曲はほとんど、J・A・シーザーが制作していて、自分たちが寺山修司を想起する音楽は、全部ここにありという感じ。ここまでクリエイターのイメージを鮮明に表現できるチームは羨ましいですね。舞台美術を観ているような映像表現も魅力的です。家の壁が空いて、背景に街が合成されていたり、シーンごとにベースの色が変わったり。はやりとか関係なく、今の若い世代にも新鮮な映像だと感じるはず。撮影方法による勢いのつけ方など、アナログな手法も駆使している。技術的なところにも注目することで、青春映画として捉えるだけではなく、寺山をより一層楽しむ入り口に立つことができるんです。
 私の中のかっこいいという概念は、寺山修司に刷り込まれているのかもしれない。お互いに作る物のフォーマットは違うけど、日常的に見るアートや舞台、作品の社会性と表現の関連づけなど「あ、いいな」と思うものは、彼が原点になっているような気がします。作品の絵がかっこいいのはもちろんですが、社会や生活に対する考え方、裏にあるテーマ、そういった人間的な思想に惹かれる。今後も掘っていきたいと思うし、私自身が根幹的に大切にしているのが、彼の芸術性なんでしょうね。
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